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本町スタンダード研究所

スタンダード・インプット・アウトプット

マルクス主義の思想的意義

社会全体を学問する。

これほど知的好奇心を刺激すことが、なぜ知的世界から失われ、そして今も失われ続けるのだろうか。

 

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(日本におけるマルクス主義の思想史的意義)

 第一に日本の知識世界はこれによって初めて社会的な現実を、政治とか法律とか哲学とか経済とか個別的にとらえるだけでなく、それを相互に関連づけて綜合的に考察する方法を学び、また歴史について資料による個別的な事実の確定、あるいは指導的な人物の栄枯盛衰をとらえるだけではなくて、多様な歴史的事象の背後にあってこれを動かして行く基本的導因を追及するという課題を学んだ。こういう綜合社会科学や構造的な歴史学の観点は、コント、ルソー、スペンサー、バックルなどの移植された明治初期にはあったけれども、一つには天皇制の統合過程によって、また二つにはあたかもヨーロッパでは十九世紀以降、社会科学の個別化専門化が急速に進行しアカデミーの各科がそうした初めから専門化された学問形態を受け入れる一方、ジャーナリズムはますます大衆化したという事情の為に、知的世界からいつか失われてしまったのである。マルクス主義の一つの大きな学問的魅力はここにあった。

丸山真男『日本の思想』p55-p56)